unplugged

アンプラグド[unplugged]: 生楽器だけで演奏すること

2020.1.20 水 漢方認定試験 家電

漢方の認定試験が終わった。昨年の秋から漢方を学び始め最初はチンプンカンプンだった五行配当表も今では丸暗記し、五臓六腑の働きと繋がりも理解し、身体の症状でどの臓腑のサインなのか分かるようになった。試験当日はこれは肝ではありません!腎です!これはひっかけ問題!瘀血と思わせて血虚でしょう!騙されませんわよ!オホホホホホホホ!!!!と心の声で軽快にツッコミながらペンを走らせた。


分からない事が分かるようになるんだから勉強するって楽しいな〜なんて。学んだ者だけが見える新しい世界の見え方と尺度に心が躍る。元来腰が重い私だが本来学ぶ事は楽しい事なのだと身体は知っているようだ。


本能的や感覚に従って素直に生きるとは、結果、目的、合理性、利便性などといった現代社会の必須項目と相対するように思える。でも正しく生きようとすることが正しい、というわけでもないから生きるとは矛盾なのだ。


窓の外には夕暮れの空のグラデーションの上に都会のビルが黒く煌めく切り絵のように今日もそびえ立っている。薬膳茶を頂きながら一日を回想してみる。


試験も楽しかったし、試験勉強が一段落した後の絶品インドカレーも美味しかった。


私の好きなインドカレー屋さんには昼のランチメニューには無いけど、言えば夜メニューが出てきて夜メニューからオーダーも可能。私は生姜と蜂蜜のチキンカレーが大好き。初めて食べたのはまだ二十代だった気がするのだけど、変わらない味にコレっ!コレなのよっ!と味覚と思い出と食欲が合致した見事なバランスを噛み締めながら頬張った。


夢中になってカレーを食べていたら店主が近づいてきてラッシーを私のテーブルに置いた。頼んでません、と言いそうになったところで「サービス。」と私の目をみて言った。私は驚きと嬉しさがごっちゃになりながら「ありがとうございます。」と感謝の言葉を述べた。顔を覚えてくれたのだろうか。美味しくて嬉しい美味しい幸せな時間。


心身共に満たされた私は帰り道に洗濯機と炊飯器を物色するために新宿の家電量販店に立ち寄った。


我が家の洗濯機は結婚する以前から夫が使っていたSHARPのドラム式乾燥機能付きのもの。当時は最先端だった洗濯機も10年の時の経過で乾燥機能が衰えて完全に乾燥しない。

何度も夫に「買い替えたら?」と言われたが、「まだ洗えるから。」「私が干せばいいだけの話だから。」と断り続けてきた。私は高額なものを壊れていないのにすぐに買い換えない。物とはいえ一期一会。家電の買い替えは終わり方が大事という考え方はある種の哲学のように私の中で育って根付いている。


そして擬人化の達人の私は家電から「どうもありがとう。こんなに使い込んでくれて私は洗濯機の人生を満喫しました。もうお別れしても大丈夫です。」と通達されるまでひたすらに待った。


2021年冬。いよいよその声が聞こえた気がした。悲しみではないポジティブなお別れの提案。家電からお達しが来た頃には人間側の準備も整っている。もうそろそろ乾燥機能がついた洗濯機をお迎えしても良いのではないか!来る日も来る日も干し続けた私にはその資格が私にはあるのではないか!と満を辞しての洗濯機コーナーへの来店なのだった。


実を言うと一年前くらいにも同じ家電量販店の洗濯機コーナーに赴いた事がある。その頃には洗濯機側からの通達がまだ来ておらず、私は修行の身だった。洗っては干す。洗っては干す。自分にはまだ早い。そう思っていた。一年前の洗濯機コーナーは除菌推しではなかったけど昨今の時代の変化に伴い、除菌機能のナノイーやプラズマクラスターが推しに推されていた。値段も高いもので30万を少し超える一年前とそう変化してないように思えた。機能面も最新機能のバージョンアップは見られない。


そろそろ潮時だな。今だな。

洗剤自動で調整して入れてくれるのとアイロンしなくても熱風でまぁまぁどうにかなる以外の機能は出揃ったな。と、ワンポイントアドバイスをくれる店員さんの脇をすり抜けて冷蔵庫と食洗機と炊飯器を見に行く。


バーミキュラ。というライスクッカーが以前から気になっている。いつからかと言うと以前我が家で炊いた米が臭い事件が起こった時に夫に「炊飯器を買おう。」と提案された時から気になっている。でも直ぐには買わない。そう。私は家電側から通達が来ないと買わない。でも炊飯器もいよいよ最近は老人が頑張って炊いた米のようになってきた。かつての輝きがない米の仕上がりに夫に「米が不味い。」と言われる。そんなにチープな米は買っていないのに。きっと我が家の炊飯器はこちらが勇退させなくては頑張り続けるような気がする。我が家の炊飯器は「まだまだ…!」と炊き続ける関節が曲がらず白髪で耳が遠くなったちょっと頑固な老人みたいだ。それはそれでおばあちゃんの知恵袋みたいで好きなんだけど。


こちらもそろそろ潮時だな。今だな。

天皇だって退位をされる時代なのだ。新時代だ。勇退して良いよ。ごめん。長い間我が家の米をありがとう。ようやく炊飯器との別れを今日決めた。家電の声とか言って散々擬人化してきたけど自分の声が跳ね返って納得した。


これから細かい細かい精査をして私の審査に潜り抜けた可愛い子ちゃんを迎え入れる準備に入ろう。また10年共に走り抜ける家電は主婦にとっての心強いパートナー。家事は夫より家電に助けられる事が多々あったりする。事実食洗機とルンバを導入してからというもの私のQOLは確実に上がった。


追い風に乗ってバーミキュラについて調べていると炊き方にコツがあるとか無いとか硬くて不味いとか情報が錯綜している。やっぱり安定の象印かなー保温機能はやっぱり楽よね。と揺らぐ今日の私なのであった。


拝啓 新しい洗濯機と炊飯器様。

水面に派生する波紋が無くなり凪が訪れたその時にプロポーズする勢いでお迎えに上がります。