unplugged

アンプラグド[unplugged]: 生楽器だけで演奏すること

そのコンビニが私の近所に実在したら

今朝、友達が「高校時代にバイトしてたローソンでMちゃんとバイトしてる夢をみた」とグループLINEの通知が鳴った。

返すタイミングを逃したけどその夢を元に妄想が進んだ私はこんな返信をした。

 

 

1 (from 私)

タイトル:そのコンビニが私の近所に実在したら

うちの近所のコンビニの店員は仕事中にお喋りをし過ぎている。先日は『バンタンのNY公演に行こうよ!』とキャッキャしていた。まるで異国のような勤務態度の緩さだ。

私はその緩い雰囲気のコンビニが好きだった。でも髪が短くてよく喋る店員の姿を見かけなくなった。私の好きだった異国のような緩さは失われ、ただの普通のコンビニになった。

彼女は何処に行ったのか。遠い旅にでも出たのか。思考を巡らせたがそのうちそんな事も忘れて普通のコンビニに慣れていった。

ある日の事だった。その日は突然訪れた。夫が泥酔して深夜に帰宅し「ポカリを買ってきて欲しい、死ぬ。」と懇願された。仕方なくコンビニに向かった。目的のポカリを手にレジに向かった私の目に〝よく喋る女〟が飛び込んできた。

いた。生きていた。

女は昼勤ではなく夜勤になっていた。理由は分からない。女はなんだかやる気もなければ覇気もなく、伸びたうどんのようだった。きっとそのうち辞めてしまうだろう。

可哀想に夜勤に追いやられてしまったのだとその時何となく察した。女は宙をみている。可哀想に。次深夜に来たら彼女はどうなっているか。少し怖くもあり密かな楽しみでもある。

  

 

しばらくしてその夢をみた張本人から返事が届いた。

 

 

2.(flom 友人N)

いた。生きていた。

よく喋る女は、可愛くて面白い友達と話す楽しみを奪われながらも、都会のコンビニの片隅で生きてながらえていた。

昼勤ではからあげくんを揚げ、レジを打ち、無駄話をしていればよかった楽しかったバイトも、夜勤では重い在庫補充や冷蔵庫の中の整理をしなくてはならない。しかも一人で。女は黙っているのが苦手だ。

夜勤明けの新宿。靖国通りを中野に向けて歩く。都会のカラスが鳴いている。昔住んでいた中野坂上についた頃、女は決めた。

そうだ、札幌に行こう。

次の日から、そのローソンにはよく喋る店員の姿はなかった。その代わり、すすきののローソンで今度は「ねえ、ナンバガ観に行こうよ」と繰り返している女の姿があった。

 

 

いた、生きていた。。。

ここまできたら、まとめよう。と私は思った。

 

 

3.(flom 私)

完結編

女の姿を見かけなくなって1年の歳月が流れた。よく喋るコンビニ店員の事など忘れ私の日常は営まれ、否応なく地球は回転し続けた。当然溶けてしまうような東京の夏も再びやってきた。

この季節になると私は帰省する。理由は札幌は涼しいからである。「札幌も年々暑いよ。」と母は言うけど東京の灼熱地獄に比べたらここは快適だ。

友達と飲む約束をしていた私はススキノの街に繰り出した。やっぱりニッカビルのあるこの交差点に来るとススキノに来たという感じがして毎度この道を観光客のようにカメラに収める。煙草を切らしていたのでコンビニに立ち寄った次の瞬間思わず息を飲んだ。

いた。生きていた。

あの女がいた。ニコニコしながら同僚に話しかけている。水を得たように活き活きとしている彼女の姿がそこにはあった。
「177番」
「177番でお間違えないですかー?」
「はい」
「530円になりますー」

伸びた中洲のようなうどんはコシのある香川うどんに回復し軽やかだった。
まさかこんなところで彼女に会うなんて、早く友達に全部喋りたい、と思いながらドアに向かった次の瞬間信じられない光景を目撃した。

いた。髪の長い女もいた。

左のレジによく喋る女がいて、右のレジに髪の長い女がいる。どういう事だ?あの時のようにローソンで2人揃ってバイトしてる。思わず足が止まった。これは怪奇現象なのか。買い忘れたフリをして今度は髪の長い女のレジで友達の煙草を買った。

 

「すみません、PEACEって置いてますか?」
「はい、ピース、、」
髪の長い女はピースを探している。するとすかさず、よく喋る女が指でピースを突いて「ピース」と微笑んで人差し指と中指を立ててピースサインをした。髪の長い女は笑いながら目と口角でありがとうと言った。
間違いない。ここは私が好きだった異国のコンビニだ。

何故2人が札幌にいるのかは分からない。知る由もない。でも2人は生きる場所を見つけたのだ。この北の大地で。去り際に「ナンバーガールのライブ行こうよー」とよく喋る女の声を聞いた気がした。

 

一完ー

 

 

 

私は連載を終えた作家のような気持ちになって一仕事終えた気持ちでいた。そしたら違う友達からLINEがきた。

 

 

主題歌.(flom 友人C)

〜エンディング〜

バイバイサンキュー

明日はとうとう 出発する日だ

最後の夜なのに することがなくて

バイト先での あの子との時間

反芻しながら 口笛なんか吹いていた

上着もちゃんと 鞄に詰めた

切符も財布に入れた 

ついでにあの子の写真も

今日のうちに バイト先に行っておこう

これからしばらく顔は合わせない

明日の朝たって 丸一日かけて

夢に見た札幌(マチ)まで行くよ

こんなに素敵なこと 他には無いだけど

ひとりぼっち みんな居なくて 
元気にやって いけるかな

僕の場所は どこなんだ

札幌に行ったって あの子がいるとは限んない

ろくに笑顔も作れないから 俯いて

こっそり何度も 呟いてみる  

(ひとりぼっちは 怖くない)

(ひとりぼっちは 怖くない)

僕の場所は ここなんだ

おじいさんになったって

僕の 場所は 変わんない

これから先 1人きりでも

うん 大丈夫

みんなは ここで 見守っていて

見守っていて

ひとりぼっちは 怖くない

ひとりぼっちは 怖くない

  

一気に良い話になった。藤くんが一気に白昼夢をみてる私と友人をまとめてくれた。主題歌って大切ですね。主題歌に人は物語を重ねる。結論は主題歌大事って事で異論はないです。